フローレンス法が適応する脊柱管狭窄症とは
フローレンス法は腰部脊柱管狭窄症の治療方法です。
今回は、脊柱管狭窄症とは何か、その原因や症状に関して解説します。
脊柱管狭窄症とは
脊柱管狭窄症は、背骨の中にある神経の通り道が狭くなった状態を指します。

日本脊椎脊髄病学会の脊椎手術調査報告によると、脊柱管狭窄症は最も多い脊椎の疾患です。*1
特に高齢の方に多く、60歳以上の方に90~100%で、70歳の方に80%で脊柱管狭窄症が診断されると言われています。*2
*1 参照元:野原裕他「日本脊椎脊髄病学会脊椎手術調査報告」『日本脊椎脊髄病学会雑誌』第15巻2号、2004年。
*2 参照元:Khalepa R.V., Klimov V.S., Rzaev J.A., Vasilenko I.I., Konev E.V., Amelina E.V. SURGICAL TREATMENT OF ELDERLY AND SENILE PATIENTS WITH DEGENERATIVE CENTRAL LUMBAR SPINAL STENOSIS. Russian Journal of Spine Surgery (Khirurgiya Pozvonochnika). 2018;15(3).
脊柱管狭窄症タイプ
脊柱管狭窄症は、①神経根型、②馬尾型、③混合型に大別されています。
①神経根型の脊柱管狭窄症
脊柱管の外側にある神経根が圧迫される場合は、神経根型の狭窄所といいます。

②馬尾型の脊柱管狭窄症
脊柱管の中心部が狭くなり、馬尾神経(脊髄の下端から下に向かって伸びている神経の束)が圧迫される場合は、馬尾型の脊柱管狭窄症といいます。

③混合型の脊柱管狭窄症
馬尾神経と神経根の両方が圧迫されている場合は、混合型の狭窄症といいます。

脊柱管狭窄症の原因
脊柱管狭窄症は、加齢とともに進行していく椎間板の変性、骨の変形な、黄色靭帯の肥厚どが原因になります。
稀ではありますが、生まれつき脊柱管が狭い場合もあります。
多くの場合は、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、変形性腰椎症などの疾患が原因で、脊柱管が狭くなります。ヘルニアの発生で馬尾神経や神経根が圧迫されたり、背骨がずれて脊柱管狭窄症となったりします。
脊柱管狭窄症の症状
脊柱管が狭くなり、腰の痛み、下肢の痛みやしびれの症状が出現します。
特徴的な症状としては間欠性跛行が挙げられます。少し歩くと、足が痛くなったりしびれたりして歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる状態です。

脊柱管狭窄症が進行すればするほど、歩ける距離が短くなります。歩けなくなったら、次第に下肢の筋力も低下していきます。
また、連続歩行距離が短くなると、抑うつ傾向になり、精神的な健康度も低下していきます。*3
*3 参照元:松平浩ほか「腰部脊柱管狭窄症の実態—症状と抑うつおよび健康関連QOLの関係—」『日本腰痛学会雑誌』第13巻1号、2007年。
脊柱管狭窄症の治療
薬物療法
腰や下肢の痛み・しびれが強い場合は、痛み止めの薬を服用することで症状を和らげることができます。症状に応じては点滴や注射での対処もあります。
薬や注射などの適応、効果は個人差がありますので、必ず専門医に診て処方してもらってください。
外科的手術
痛みなどの症状が強ければ強いほど、狭窄症が進行してしまい、外科的手術が適応されます。一般的に行われるのは、腰椎椎弓切除術と脊椎固定術です。
腰椎椎弓切除術は全身麻酔にて、内視鏡を使用して行われ、背部の皮膚を切開し、椎弓の一部や肥厚した黄色靭帯を切除することにより神経の圧迫を取り除き、脊柱管を広げます。
脊椎固定術は全身麻酔にて、背部の皮膚を切開し、変性した椎間板を取り除いて、腰骨から採取した骨を詰めたケージを入れて、脊椎をスクリューとロッドで椎骨を固定します。腰椎椎弓切除術の後に行われる場合もあります。
低侵襲治療—フローレンス法
フローレンス法は、欧州や南アメリカを中心に導入されている脊柱管狭窄症の治療です。
施術は局所麻酔と鎮静で1~2㎝の切開をして経皮的に行われます。
特殊なスペーサーを挿入することにより、狭くなっていた脊柱管が拡大され、神経の圧迫が消失します。背骨の安定を図る靭帯が損傷せず温存するため、スペーサーがずれることなく、背骨の不安定性を軽減できます。

スペーサーの挿入により、狭くなっていた脊柱管が拡大されるだけでなく、椎間孔の平均面積も増加します。*4
*4 参照元:Luca Jacopo Pavan, et al. Clinical and radiological outcomes following insertion of a novel removable percutaneous interspinous process spacer: an initial experience. Spinal Neuroradiology. 64(9), 2022.